いい会社をつくろう。を合い言葉に
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支援企業
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内容事業承継
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ファンド名夢承継ファンド
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業種製造業
同社は、創業家と社長で保有していた株式を、ソリューションデザイン(SD)の夢承継ファンドを活用し、次世代経営陣に承継されました。その経緯やSDとの協働について、同社の堀会長、橋場社長にSDの菅生がお話を伺います。
次世代経営陣への事業承継の検討
菅生:次世代経営陣への事業承継を検討された背景を教えてください。
堀会長:もともと自分は創業家出身ではなく、創業者から声を掛けられ3代目の社長に就任してから10数年経っていました。自身も株式の一部は持っていましたが、大半はすでに経営にあまり関与していない創業家(前社長の奥様、お嬢様等)が持っており、将来相続が発生して所有と経営が分離するより、株は次世代の経営陣に持たせた方が良いと考え、創業家の方々とも考えが一致しました。
菅生:当時、すでに次世代の経営者は決まっていたのでしょうか。
堀会長:いいえ。52歳で社長になったとき、10年で次世代を育てようと思っていましたが、その後ずっとワンマンでやっていたので育つはずないですよね。その後リーマンショックで初めて赤字になり、それまでトップダウンで出していた理念やビジョンが社員には伝わってなかったんだと気付きました。それでトップダウンから社員と一緒に考えるスタイルに変え、幹部社員と一緒に企画会議をしたり中期経営計画を考えたりしましたが、幹部から出てくる意見が会社としてチャレンジするというより現状維持の意見が多く、次世代育成の難しさを感じ、更にその下の40歳くらいの世代への承継を考え始めました。
菅生:ソリューションデザイン(SD)と出会った経緯を教えてください。
堀会長:私も一部株を持っていましたので、色々な銀行さんから株をどうするのかと聞かれ、三菱UFJ銀行さんからはSDさんのご紹介も受けていました。また同時期にM&Aの仲介会社さんからは、結果的にSDさんの何倍もの価格で買い取るようなお話しも頂いていました。自分の私利私欲だけを考えればそれもあるのでしょうが、それでは今まで一緒に会社の価値を高めてきた社員たちに何も返せないですよね。そこで、株式は社員に承継することを前提にプランを考え、かつ経営支援もしてくれるSDさんと組むことを選択しました。
菅生:他の大手企業の傘下に入るということは考えなかったのでしょうか。
堀会長:それは無かったですね。中小企業だからこそできる事もありますし。自分たちだけでやれるかどうかわからないし、苦労もすると思いますが、次の世代には自分たちの力でやって欲しいと思っていました。
菅生:ソリューションデザイン(SD)の印象はいかがでしたか。
堀会長:まず三菱UFJ銀行と国の機関である中小機構でやっているので、そんなデタラメなことは要求してこないだろうと思いましたし、中小企業を育てるためにという想いは感じられましたね。実際のメンバーの方々についても、例えば当社の社員だけで会議をすると結局最後は社長が決めることになっていたのが、SDさんに入ってもらうと組織で判断できるようファシリテートしてくれたり、現場に入り込んで意見を吸い上げ纏めるのが非常に上手かったり、他にも色々な面でこの会社が成長するために必要なことを勉強させてもらいました。
ソリューションデザインの資本受け入れ後の変化
菅生:ソリューションデザイン(SD)の参画について社員の皆さんの反応はいかがでしたか。
橋場社長:当時社員だった立場でお答えすると、「会社が変わるんだな」ということを感じていました。色々なミーティングに参加させて頂く中で一番感じたのは、それまで会社は堀社長のトップダウンで動かしていて、社員は反対意見をいうことも少なく「社長が言うならそれが正しいんだろうな」ぐらいに思っていたのが、SDさんから、組織というのは皆で色々話してこうやって動かしていくんだということを教えて頂きましたし、それが今も根付いていますね。
堀会長:結局、社長の私がいくら「皆で一緒に考えよう」と言ったところで、幹部たちからすれば社長がトップダウンで決めていることに変わりなかったんですよね。それがSDさんが入ってくると、皆で決めれるようになり、SDさんのメンバーも入り込んで、かき混ぜるんではなく周りからサポートしてくれるので、次第に社員との良い関係ができていましたね。
後継社長への承継
菅生:最終的に橋場社長に決められた経緯を教えてください。
堀会長:当初候補は4人の部長で、その中から橋場を含む2名に絞り、SDさんと相談しながら決めました。自分一人で決めるより、別の観点の意見も得られSDさんが色々整理してくれて、最後は確信を持って決めることができて良かったと思っています。
橋場社長:当時、候補だった4人の内2人は私の元直属上司だったのですが、その2人を降格させ私の部下になってもらうことになり、堀会長からその人事を私からその2人に説明して納得させろと言われ、相当悩みましたね。ご本人の考えや社員の眼もありますし。
堀会長:経営者と言うのは綺麗事だけでは通用しないし、ある意味非情な部分もありますからね。かといって厳しい局面で人間性が変わってもいけなくて、良い人間性を維持しながら、決断するときは厳しいことを言わなければならないこともある。長く経営する中では必ずそういうときがあるので、経験し乗り越えてもらいたかったんです。
橋場社長:2人に納得してもらうまで何度も話し、3、4か月かかりました。周りも色々な話をするので丁寧に説明して火消しもして本当に大変でした。最終的に2人が「わかった。じゃあ俺たちが支えるから。」と言ってくれて、それで逆に自分としても覚悟が決まりましたね。あの時は自分のターニングポイントだったと思いますし、今では自分のバックボーンになっています。
今後の展望
菅生:今後の貴社の展望について、ソリューションデザイン(SD)と組んで頂いたことが何かプラスになっていれば教えてください。
橋場社長:現在インドに進出してビジネスを拡大していますし、直近M&Aで他社を買収しましたが、そういったことにチャレンジできるのも、SDさんと一緒に会社の基盤を作ることができたからこそだと思っています。
事業承継を考えるオーナー経営者へのアドバイス
菅生:事業承継を考えるオーナー経営者へのアドバイスをお願いします。
橋場社長:当社では、承継後堀会長は経営にほとんど口を出さないのですが、一方他の会社さんで先代が承継したあとも口を出し続け2代目3代目が上手く行かなくなる例をたくさん見て来ました。そこから思うのは、事業承継の成否は、「受け取る側の覚悟」より「渡す側の覚悟」だと思います。
堀会長:経営者もそれぞれ別の人間なので、当然違うところがあり、腹の中ではもちろん気になることはありますが、それを言ったところで仕方ないですよね。代表権も降りているわけだから、自分の経験などはもう会社に対してではなく、商工会とか別のところで活かせば良いと思います。
堀会長:地域には後継者がいないので事業を畳んでしまうとか完全に売却するといった会社も多いですが、このままでは地域がもたなくなってしまう。そこで経営者には、事業も承継も早めにチャレンジして欲しいと思います。その際オーナーのための事業承継ではなく、社員のための事業承継を考えるのがオーナー経営者の責任だと思いますので、そういう観点で考えてみてはいかがでしょうか。